「身体からのメッセージ」を考察~慢性閉塞性肺疾患,脊柱管狭窄症を発症し運動機能障害を呈した症例~
- 未在代表 松舘 敏
- 2023年1月29日
- 読了時間: 4分
本症例は,アンケートにもご協力いただいており,未在Webサイト「患者さんの声」にも掲載させていただいておりますのでご参照いただければ幸いです.
まず,問診票を通じて運動機能障害を呈するまでの,生活歴、病歴を伺い整理すると以下の重要な内容を聴取することが出来ました(個人情報守秘義務から,キーとなる項目のみご紹介します).
生活歴:多飲酒,喫煙,転倒事故,フレイル,間欠性跛行(疼痛性,運動耐容能性),
生活活動低下,階段昇降困難,立ち上がり動作全介助となり訪問リハビリ利用,
右上肢挙上困難(洗髪動作困難).
病 歴:前立腺肥大症,慢性閉塞性肺疾患(COPD),COPDの恐さの認識は無し,
腰痛,脊柱管狭窄症,右下肢運動障害,仙骨部褥瘡,皮膚の圧迫痛の可能性,
高血圧症.
今回、オステオパシーメカニカルリンク治療技術を用いて、メカニカルリンクにおける「一次病変」の検出を行うと84箇所に及ぶ病変組織(体性機能障害)が診られました.その一次病変の中には,生活歴の右上肢挙上困難に起因すると思われる「右肩甲上腕関節離開病変」,運動耐容能(息切れ、頻呼吸)低下に伴う間欠性跛行の更なる悪化に起因すると思われる「気管支-心間膜病変」「心臓スケルトンの病変」等も診られています.
「抑制バランス」技術にて真の原因(もっとも悪さを起こしている病変)を診ていくと,腰椎3番の椎骨伸展病変となりました.ただこの段階では胸椎3番との判断が難しい状況であり,まず腰椎3番の治療を行うと殆どの優先病変(ユニット内の一番の病変)消失したのですが,胸椎3番の椎骨屈曲病変と仙骨左側のカウンターニューテーション病変は消失せず,腰椎3番同様のオステオパシー病変と解釈し,胸椎3番そして仙骨左側の治療を行いました.最後に背臥位になっていただき,一次病変部位の再検査(確認)を行い,今回の治療を終了としました.
本症例は外出困難であり,従って通院困難であることから,訪問治療をさせていただきました.寝室から居間に歩行器歩行移動の際には,治療前に観られていた臀部の運動時痛,息切れ頻呼吸も無く,移動完遂され,身体が軽くなったと話されていました.
本症例の検査抽出された病変から考察するにあたり,多くの病変が検出されたことから多くのことが考えうる状態にありましたが,やはりポイントとなるのは「胸椎3番のメッセージ」が非常に強く感じております.
病変部位には挙がりませんでしたが,胸腰椎移行部を中心に左凸の側彎が触診されており,気性的にも荒い面も伺えること,メカニカルリンクにおいては肘頭の病変,ブレグマの病変があり(胸骨内には病変無し)エモーショナルな問題が考えられる状態などから,後頭骨-脊柱-仙骨における「Robelt Leverが考えた障害のパターン」の「パターン4」のハートセンター「感情の問題」とも合致する面あり,感情問題が内在すると推察し得ました.肺器官は自律神経の交感神経支配となりますがその脊髄神経は胸椎1から4番にあり,本症例のオステオパシー病変の1つであった胸椎3番と高位が一致してきます.また最近の生活で運動時の息切れ/頻呼吸が悪化し間欠性跛行が悪化しているという状態に対しても,心臓器官も肺と同じ神経支配にあり,今回の病変にも心臓に関係する病変が診られていることから,肺疾患を起因に「内臓-体性 反射」により脊椎の病変が発生し,「体性-内臓 反射」にて心臓器官に病変が発生,そのことにより運動耐容能低下し間欠性跛行の悪化ならびに最近になって高血圧症となり血圧降下薬処方となったと推察し得ました.
脊柱管狭窄症に関しては,狭窄病態は不明にて考察しかねるのですが,身体からのメッセージからは「腰神経叢病変」「腸骨下腹神経病変」「股関節病変」「大腿骨頸部力線病変」「仙骨病変」が診られていました.そして運動時痛(痛み)に関して伺うと,筋痛と思われるものは訪問リハビリでマッサージしてもらうことにより,その時は楽になる.とのことでした.痛みの状態(質)を質問すると,非常に困惑された様子で比喩(例えた表現)できず「なが~く,辛い状態で座りたくなる」と話されていました.このことから,狭窄状態は脊髄自体のスライドがブロックされているか,脊髄神経(前枝,後肢)から末梢神経にかけて伸張できないでいるのではないか,と推察しています.そして狭窄自体が発生したメカニズムを考察する中では,転倒時の臀部からの外力(衝撃),そして脊柱の障害パターンによるものを考えました.
非常に混迷を極める身体状態にありましたが,身体を傾聴すれば,正直にメッセージを発してくれていました.
これ以上,身体機能(生活機能)が低下していけば,寝たきり状態になることも考えられることから,改善に向かうことを切に願っています.
2023年 1月29日
未在代表 松舘 敏






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