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「脳卒中(左視床出血)」  ~先人に学ぶ シリーズ 4~



 オステオパシー(医学)の「病因」の基礎的考え方に「構造(解剖)は機能(生理)を支配する」といった哲学がある。

 

 オステオパシー治療は、この構造の病変(オステオパシー病変)を施術で健全化することにより、機能(生理)を正常化し、病の治癒や症状の寛解を促していく。


その為、人体構造(解剖学)そして身体機能(生理学)の詳細な知識が求められる。そして更に、その構造体を触診できる技術とともに、構造体の「正常な位置」「正常な硬さ」「正常な動き」を診る治療者の「感性」が求められる。


そして感性に加え、「病」が発症するにあたっての「構造体の偏移・変化のプロセス」の知識を背景に置き、身体の構造を診ていくことが必要となる。



以下に、先人の先生方から学び得た「知識」を記録に残します。



脳卒中(左視床出血)について



 今回は、左側視床出血による歩行障害で来院されている女性の患者さん(68歳)の治療について記述する。但し、現症状や既往歴などは省略する。


 前回のコラムにおいて、いきなり患部を治療するのではないということは既に書いた。当患者さんに対しても同じである。


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 頭の中を透かして触診してみると、出血している視床付近は真っ黒な塊のブラックホールのように感じ(感覚を文章表現することは難しく、うまく伝わらないかもしれないが、出血の痕を感じるという意味ではなく、真っ黒な空洞があるように感じるという意味)、始めは何も見えないが(感じないが)、全神経を集中していると、左の視床が中心軸に対して偏移しているのが大脳基底核全体の状態を見て感じ取れる。


 そして、更に傾聴していると、その偏移は右大腿骨の遠位骨端線の捻じれによる骨膜の張力が関係しているように感じられたため、頭蓋反射テクニックを利用して、それを確認した後、右の尾状核を治療することで、輪状甲状関節を矯正(前回のコラムで説明済)し、その後、頭蓋反射テクニックを用いて右大腿骨の骨端線部を正常位置に矯正することで、張力を消失させ、関連をほぼ断ち切ることが出来た。


 次のステップとしては、頭蓋腔を拡げる必要がある(その理由も前回のコラムで書いた)。従って、当患者さんの場合は、時間の関係(三十分)もあり、破裂孔だけをリリースし、ある程度、脳頭蓋腔を拡げた後、当患者さんの場合は鍼を利用して左の尾状核を緩め、その後、心臓弁と左内包に対してアプローチをすることで、左の視床が元の位置に戻りやすい状態を作り、視床を基の位置に戻す為に乳頭視床路を利用し乳頭体を刺激する。これにより、脊髄視床路の通りをある程度改善させたのだ。

時間的な制約もある事から、この日の治療はここで終了することになったが、治療後の歩行は治療前と比べて、明らかに早く歩けるようになっていた。


 この様子はビデオにも撮り、患者さんの了解も得ているので、セミナーでまたお見せしたいと思う。勿論、完全ではないし、右足関節の拘縮も残ってはいるが、オステオパシーの可能性を実感して頂けると思う。


 このコラムを見られた方の多くは、上記の説明に納得どころか懐疑的または批判されるだろうことぐらいは了解している。しかしながら、これを裏付けるエビデンスは、今のところ無いにしても、脳梗塞などで全国より来院される他の多くの患者さんの期待に応えられているのも事実である。



JOPA会報誌 「JOPATOMIA 会長コラム」より抜粋掲載させていただく。





2023年06月04日(日)

未在代表 松舘 敏

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