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「運動器障害に対するオステオパシー的介入」の一例紹介 ~前編~.

整体院やリラクゼーション・サロンなどを標榜するお店で、オステオパシーをやっていますと聞いた時、皆様は、どのような印象やイメージをされますか?

ある方は、「オイル・マッサージなどをしてもらい、身体を軽くしてもらうとこでしょ」

また別の方は、「痛みの緩和にと揉んでくれるところ」

更に、「自然治癒力を高めると言って、アロマ香、綺麗なお部屋で、何かしらしてくれるところでしょ」

等々、思われている方が多いのではないでしょうか。

(オステオパシー医学を御理解いただき、ご自身の健康に活用されている方に対しては失礼な例えになったかも知れません。お詫び申し上げるとともにご容赦下さい。)


日本では、「オステオパシー」という医学の認識、ご理解いただいている方は少なく、他の整体と混同・混合されている方が大半だと思います。

また、オステオパシー治療院をご利用されている方でも、何かしらの「苦痛」や「体調不良」を治療してもらっている方が多いと思います。実際、私のところでもそうです。


しかし、スポーツ・オステオパシーと云われる、スポーツ選手の身体コンディショニングや痛みの治療にオステオパシー手技治療を用いている場もあり、また、世界のオステオパシー医師は、靭帯の損傷や骨折後の治療にオステオパシー治療が行われています。

そして、痛みは無いけれど、腕や脚の関節が動かず、日常生活活動(動作)に支障がある方の、「関節可動域の改善」にもオステオパシー治療は効果をもたらすことが出来ます。


現在進行形ですが、生活期(維持期)リハビリテーションに、機能改善を願い入所された方を担当する機会を得ていましたので、非常に特殊な症例ですが、運動器障害に対し、私が行っている「オステオパシー的 治療介入」を御紹介したいと思います。

この利用者さんは、約3ヵ月の入所リハビリ後、在宅復帰される方なのですが・・・。

維持期リハビリ(個別機能訓練)施設で、マッサージとマシン運動が提供されているところに来てしまい・・・。

たまたま私が担当することになったので、希望される「上肢の機能改善」を目標に取り組んでいただいていますが。

非常に勢いのある方なだけに、他の療法士が担当だったら・・・と思うと、怖いです。



では、主訴「(非麻痺側上肢)腕が挙がらないんです」の方に対する「オステオパシー的 治療」を、ご紹介していきます。


共同偏視 等の神経症状が出現し急性期病院へ搬送され、脳梗塞の診断を受け、急性期病院での入院加療を経て、地元の一般病院に転院後、リハビリテーション(理学療法)が行われた? 行われていなかった?後、施設にリハビリテーション目的で入所された方でした。


【「共同偏視」についての説明】


共同偏視(きょうどうへんし)とは、脳卒中(脳出血・脳梗塞)や脳腫瘍などの脳病変により、眼球運動の中枢(前頭眼野や橋)が障害され、両目が同じ方向(水平方向や斜め下など)に強制的に偏って向いてしまう症状。

脳の神経経路障害を示唆する重要な徴候(サイン)で、意識障害や片麻痺を伴うことが多く、緊急の治療が必要です。

共同偏視は、数週間位でもとに戻りますが、薬剤治療が行われない場合、持続するケースもあります。また、頭頸部の回旋に問題が出る方もいます。


《主な特徴と発生メカニズム》

症状: 両眼が揃って右や左など、特定の方向を向いたまま動かなくなる。

原因: 脳の血管が詰まる脳梗塞(特に中大脳動脈など太い血管)または脳出血により、大脳皮質から脳幹(橋のPPRF)に及ぶ眼球運動神経経路が圧迫・障害される。

メカニズム: 眼球の向きを制御する神経経路(前頭眼野~脳幹のPPRF)の障害。

代表的な原因疾患: 脳出血(特に被殻出血・視床出血): 最も代表的な原因。

         脳梗塞: 脳の太い血管が詰まり、神経経路が機能しなくなる。

         てんかん(発作): 短時間で症状が消失・移動することがある。

         頭部外傷・脳炎・脳腫瘍: 脳の運動領域に異常を生じる。


《代表的な共同偏視の種類》

被殻出血: 病変のある側を向く(例:右被殻出血なら右共同偏視)。

視床出血: 内下方(寄り目で下)を向くことが多い。

小脳出血: 病変の反対側を向く(健側を向く)。


特に急性期において、突然の頭痛や嘔吐と共に共同偏視が現れた場合は、脳卒中の可能性が非常に高いため、すぐに救急受診が必要です。心原性脳塞栓症のような大きな梗塞で特にみられやすい重要な神経学的所見です。 


施設ですから、CTやMRI画像の確認は出来ませんし、上述したように、理学療法が行われたのかは不明であり、尚且つ「リハビリテーション・サマリー」を出さない病院なだけに、一般病院の医師の診療情報に記載されていた、「共同偏視」があったこと、「○側の中大脳動脈エリアの梗塞巣」から、上記の「共同偏視の説明」に当て嵌めていくと、「○側の橋付近の脳梗塞」ではないか、と推察していました。

確かに、麻痺側上下肢に著明な麻痺はありませんでした(Br.stageⅤ)。ただ、麻痺側上肢には「運動失認」が観られました。


今回の脳血管障害であれば、病院から在宅復帰できる状態でしたが、ご本人の主訴、(ADL:)日常生活活動(動作)の阻害要因は、「非麻痺側上肢が挙がらない」機能問題にありました。


入院される以前までの情報が無く、非麻痺側上肢の問題がいつ発症したのか?受傷起点も不明でした。ご本人もご高齢であり、いつから腕が挙がらなくなったのかは解らず、ただ「腕が挙がらない」「現・麻痺側上肢で非麻痺側上肢を上げたり、引っ張ったりと体操していました」と話される状況にて、今回の疾患とは関連性は乏しいのですが、問題となるADLに対して、身体機能上の問題のプライオリティ・ナンバー1は非麻痺側肩甲上腕関節の可動域、及び筋力として、その改善に努めていくことにしました(臨床思考)。



《理学療法評価》

外部観察-非麻痺側肩甲骨は外旋し上内側へ、上腕骨頭は内側ならびに前上方へ、著明に偏移していました。

肩甲上腕関節屈曲可動域-麻痺側:110度位、非麻痺側(他動/自動 共に):20度位。

非麻痺側上肢挙上主動作筋の筋収縮は乏しい状態、にありました。


《1st ステージ》

まずは、関節可動域の拡大に取り組むこととし、「オステオパシー的 視点」から「胸鎖関節」「肩鎖関節」「上腕骨頭引き出しと偏移修正」、そして「烏口突起靭帯」「肩甲骨の位置修正」、更に「後頭底解放」「視神経から視放線までの解放」と順次展開し、非麻痺側(他動)20→100度位までに改善。

しかし、屈曲主作動筋は活動せず、他周囲筋で腕を挙げようと肩甲帯を吊り上げる代償動作が続いていきます。


《2nd ステージ》

問診から得られた盲腸Ope歴聴取から、「盲腸周囲の癒着解放」「腸腰筋解放」「非麻痺側仙腸関節」、更に「頸椎の調整」「腕神経叢の解放」「脳内脊椎解放」。そして「座位でのオステオパシー的 体幹評価」から「肝臓解放」を行っていきます。

この時点で、非麻痺側(他動)100→120度位までに改善。

屈曲主動作筋をターゲットとした筋力エクササイズ、そして作業療法を導入していきます。


《3rd ステージ》

この時期から、ずっと気になっていた麻痺側股関節外旋位固着状態の解放を目的に「両大腿骨骨内病変解放」「仙骨解放」「麻痺側股関節リコイル」「縦隔からのアプローチ」を行います。

股関節の固着状態は解消しています。


《4th ステージ》

「3rd ステージ」の一部を継続しながら、「頭蓋内硬膜解放」「脳調整」や「頭蓋調整」を行っていきました。

脳卒中に対しては、伝統的頭蓋オステオパシー手技は「禁忌」にあり、蝶形骨等の調整は硬膜調整にて行うこととしています。

麻痺側(他動):110→140度位に改善、非麻痺側(他動)は変わらず 120度位のままにあります。

屈曲主動作筋をターゲットとした筋力セラバンド・エクササイズは、肩甲帯の代償動作が幾分減弱したことから、座位姿勢に変更し継続実施、加えて上肢の協調運動、作業療法はペグ・エクササイズからペットボトル(水入り)4サイズで重量感覚に差異を作り物品移動(前後/上下)を行い始めています。



※視床や被殻の脳神経核に「意図」を持っていこうとしたら、脳全体の塊が触診されてきて、背臥位の頭頂から、顔面視上からでも、「C」の字状な脳の形が感じられ、麻痺側後頭底に巻き込み引っ張られている状態を感じていました。時間をかけてバランスをとっていくと、「巻き込み引っ張られている状態」は解放されています。「C」の字状態は変わらず、この凹み部分は、もしかしたら「脳梗塞部分」なのかも知れないな、と思う瞬間でした。



ここまで、ご一読いただきありがとうございました。


読んでいただいてお解りになりましたでしょうか?


要は、リハビリテーション医療で行われる、「エクササイズ」や「ADL練習」の前に行われる、「機能的問題点のコンディショニング(調整)」を、「オステオパシー的 視点」で「検査」し、「(手技技術で)調整」していきます。


理学/作業療法とは一線を画す「視点」ですので、原因が解らない問題に対して、原因を視つけながら治療していくので、効果は大きいです。


この症例の方も、初回の夜、ベッドに寝ていて、いつものように天井に向けて腕を挙げていくと、100度位まで挙がることに気付いたとのことで、翌日そのことを大満足(興奮)して話して下さり、更に2週間後位に自宅へ外出された際に、ぎこちなさは在りながらも、箸で漬物を取ろうとしている様子を、娘さんが見て、喜んでくれていたと施設相談員を通じて聞いております。


ご本人は、「早くここに(施設に)来れば良かった」と話して下さっており、毎日、個別機能訓練の実施日を楽しみに待つ状態で、積極的に取り組んでいただいています。


今、入所予定期間の折り返し期となり、残り1カ月と半月を迎えています。

「頭頸部の回旋位」「頸部の硬さ不良」「上腕骨頭の圧縮」「主動作筋の筋力問題」「肩甲帯の代償問題」等、多くの機能的問題が残存しており、ご本人の喜びに満足している訳にいきません。

課題である日常生活活動(動作)の正常動作にどれだけ近づけられるのか、不透明な状態ではありますが、残りの期間も真摯に、精一杯、「オステオパシー的 症候学」を思考し、実施してまいります。


P.S:残りの期間でも、多くの「気づき」や「改善」があると思われます。よって、本文は「前編」とし、機があれば「後編」を御紹介したいと考えています。

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